Web3とAIが交差する未来──すでに激化する開発競争【N.Avenue club 3期1回ラウンドテーブル・レポート】 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)

Web3とAIが交差する未来──すでに激化する開発競争【N.Avenue club 3期1回ラウンドテーブル・レポート】

ビジネスと金融の最前線で注目を集める「Web3」と「AI」。

暗号資産市場では、AIが自律的に取引や投資を行うシステムの開発が進み、詐欺対策や税務など、さまざまな領域での活用も進む。また、OpenAIやGoogle、中国のDeepSeekといった巨大プレイヤーに挑もうと、ブロックチェーンを基盤にした分散型AIの開発に取り組むスタートアップも登場している。

ビジネスと金融の世界で最も注目されている「Web3」と「AI」が、いよいよ本格的に交わろうとしている中、Web3ビジネスを加速させる一助となることを目指して活動している会員制のコミュニティ「N.Avenue Club」は、7月24日のラウンドテーブルでこのテーマを採用。技術的背景から開発現場の実情まで取り上げ、Web3がもたらす新たな価値のカタチと、AIによって加速するビジネスの進化について、第一線で活躍する専門家や開発者のプレゼンを聞き、金融・ビジネスにもたらされる変化や可能性について議論した。

N.Avenue clubの活動は主に、国内外のゲスト講師を招いた月1回の「ラウンドテーブル(研究会)」と、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」など。いずれも日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指したものだ。

ラウンドテーブルは、会員のみに向けたクローズドなイベントのため、ここではその一部をレポートする。

AI技術の民主化目指すSentient共同創業者:オープンな開発を持続させるための課題

ラウンドテーブル冒頭のブリーフィングセッションには、AI技術の民主化・ボーダレス化を目指すAIコントリビューター(貢献者)のコミュニティを基盤に、汎用人工知能(AGI)の開発支援を行っているSentientの共同創業者ヒマンシュ・チャギ(Himanshu Tyagi)氏がオンラインでプレゼンを行った。

シードラウンドで8500万ドル(約126億円、1ドル148円換算))を調達したSentientは、メンバーにインド科学研究所教授でもあるチャギ氏のほか、プリンストン大学教授、ポリゴンの共同創業者などが名を連ねている。

チャギ氏は現状について、もともと大学や研究機関が協力するオープンな文化で発展してきたAGI開発が近年、巨大IT企業がその技術を収益化し、業界全体を支配しているとして疑問視。「AGIはリスクがこれまでの歴史的な技術とくらべても高く、人間を脅かすリスクがある」とも指摘した。

さらに、オープンな開発を持続させるための2つの課題──貢献への公正な報酬分配とセキュリティとアライメント(方向づけ)──を挙げ、それぞれに対するSentientの取り組みを紹介した。

KDDI舘林氏:「AI×Web3」分野の国内外の投資概況と有望領域

メインセッションの最初に登壇したのは、KDDIの舘林俊平氏(オープンイノベーション推進本部副本部長兼ビジネス共創推進室室長)。同社は2023年にWeb3推進部を立ち上げ、NFTマーケットプレイス「αU market」やノンカストディアルウォレット「αU wallet」、バリデータ事業などを展開してきた。

舘林氏は、「AI×Web3」領域に関する国内外の投資の概況を報告、AIの投資は増加、Web3単体は減少傾向だが、「AI×Web3」の複合領域への投資件数は国内外で確実に増加しており、中でもAIエージェント同士で報酬をやり取りする基盤などにお金が集まっていると紹介した。

さらにグローバル、日本ともにお金が集まっているのはRWA(現実資産)トークン化領域であり、一方、注目が集まっているのは、グローバルではAIエージェントのインフラ、日本ではAIが必要とするリソースなどを分散型技術で構築、いわゆるDePIN(分散型物理インフラ)や、IPコンテンツの経済圏を構築するビジネスと述べた。

Bitgrit向縄氏:キヤノンで知財管理の経験をもとにAIと分散型IDのスタートアップを起業した理由

次に登壇したのは、UAE・アブダビ拠点のAI×Web3のスタートアップBitgritのCEO・向縄嘉律哉氏。同社のほかに、シンガポールで分散型IDのスタートアップも起業している向縄氏は、分散型IDは社会に浸透するときが間違いなく来ると指摘、最初に浸透するのは国や会社など「境界線をまたぐ領域」だと話した。

その向縄氏が起業に至った原点は、キヤノンで知的財産に関わり、特許の重要性を痛感したこと。ブロックチェーンやスマートコントラクトと出会い、従来の特許制度では保護が難しいAIアルゴリズムの権利を守れないかと考えたことが原点だと述べた。

向縄氏は、AIの民主化にはデータサイエンティストのコミュニティが必要と考え、データサイエンスコンペティションを開催。今では4万人規模のグローバルなAI開発者コミュニティを構築している。

AVILEN・松倉CEO:AIのメリットをWeb3で増幅する

最後に登壇したのは、AVILEN(2018年創業、2023年上場)の取締役CEOで、弁護士資格を持つ松倉怜氏。同社が手掛けるのは、AIを使った事業変革の支援で、特徴は、AIを提供するだけでなく、顧客企業が内製化できるところまで伴走することだという。

松倉氏は、AIができるのは「低コスト化/ハイスピード化/新たな価値の創出」の3点であり、これらをWeb3で増幅することが鍵と指摘。現状のボトルネックは、AI開発に必要な「データの枯渇」とした上で、独自データとオンラインフィードバックが重要になると述べた。Web3がデータ共有・決済・証明などの基盤やインセンティブ構造を与えることで、AIがより大きな価値を創出できる可能性があると述べた。

「AI×Web3」の活用領域、課題、具体的なサービス案をディスカッション

ラウンドテーブルの後半は、参加者全員が6つのテーブルに分かれてディスカッションを行った。テーマは①「AI×Web3の活用領域と課題は?」、②「AI×Web3の具体的なサービス案は?」。

6つのテーブルからは、「AIもWeb3も日進月歩で法律がカバーしきれず、プレイヤーが二の足踏んでいる。ユースケースが先か法律が先かという状態だ」という指摘があったほか、クレジットカードの不正利用がこの10年で5倍に増えて年間500億超えており、不正利用対策に活用できるのではといったアイデアも上がっていた。

ディスカッションにも加わった登壇者からは、「専門領域にディープダイブするとそれ以外が弱くなるので、他の業界の人と議論すると視野が広がる」「一番重要なのは当事者から話が聞けること」「他業界の人から取り組みを聞けることは新鮮だった」といった感想が聞かれた。

N.Avenue clubは、国内外のゲスト講師を招き、毎月、開催している「ラウンドテーブル(研究会)」を軸に活動する、日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指す会員制のコミュニティ。ラウンドテーブルのほかにも、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」なども行っている。

N.Avenue club事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンへの参加を呼び掛けている。

|文:瑞澤 圭
|編集:CoinDesk JAPAN編集部
|写真:多田圭佑

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